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事例:E-252

ラジエータ内部コアの詰まりによる水温上昇について

【整備車両】 
 NS400RF (NC19) ※1  年式:1987年  参考走行距離:23,000 km
【不具合の状態】 
 水温が上がり気味でした.
【点検結果】 
 この車両はメガスピードにて継続検査(車検)およびその前の法定定期点検を承ったものです.点検の際にエアフィルタがキャブレータに吸い込まれて半分無くなっている ※2 等の不具合を確認して整備しましたが,今回の事例では同点検中に追加整備したラジエータについて記載します.

図1.1 古いラジエータキャップの取り付けられているラジエータ
 図1.1は入庫時のラジエータの様子です.水温が上がり気味であるとお客様からお聞きしておりましたが,キャップが当時ものである可能性があり,中身が懸念されました.前回車検時に他店で点検整備が実施されたものですが,その時の整備記録簿には冷却水交換やウォータポンプオーバーホールと記されていました.

図1.2 通路の狭くなっている上側コア
 図1.2はラジエータキャップを開けた様子です.内部を確認する為に少し冷却水を抜いたところ,内部のコアが堆積物により狭くなっていることを確認しました.これではいくら水圧をかけても効率よく冷却水が循環しないと言えます.
 2年程度の経年で陥る詰まりではないので,前回ウォータポンプをオーバーホールしたとする他店でも気づいていたはずですが,この様な状態ではいくらウォータポンプを整備しても意味がありません.

図1.3 通路の狭くなっている下側コア
 図1.3は上側のコアの詰まっているラジエータを取り外し,確認の為に下側のパイプから中身を見た様子です.上側と同様にコアの通路が非常に狭くなっていました.オーバーヒート気味の原因はまさにこれであると判断できます.ここまで通路が狭くなっていたら交換しなければなりません.


【整備内容】
 お客様がコアだけ新品に交換された代替品のラジエータを所有されていたことから,それを送っていただき交換しました.

図2.1 交換された状態の良いラジエータ
 図2.1はお客様に送っていただいた状態の良いラジエータを古いものと交換した様子です.入庫時からサブラジエータが取り付けられていましたが,本体を状態の良いものに交換しただけでも冷却能力の大幅な改善が見込まれます.

図2.2 交換した状態の良いラジエータ内部
 図2.2は状態の良いラジエータの内部を見た様子です.コアの通路がしっかり確保されていて,冷却水の良い循環が期待できます.これと比較すれば図1.1や図1.2のコアの状態がいかに劣悪であったかが分かるはずです.

図2.3 きちんと冷却されている状態を示す水温計
 図2.3は試運転を実施し,外気温20℃において一般国道を巡航したときの水温の様子です.真ん中より少し下の位置で安定していました.渋滞では多少水温が上がるものの,走り出せばすぐに図の位置で落ち着くため,冷却能力は良好であると判断して整備を完了しました.


【考察】 
 前回車検時に他店で交換されたはずのエアフィルタがキャブレータに吸い込まれていたり,整備したはずの水回りがこのような状態でした.どちらも書類に整備記録が明記されていました.このことが何を示唆しているのかは明瞭です.つまり,安易に他人の仕事を信用するな,ということです.ですので他店での過去の整備記録の内容にかかわらず,メガスピードにて私が実際に確認していないものはすべて不明あるいは見ていないので分かりません,とお答えします.
 今回の定期点検を実施する際にも,一応他店の2年前の整備記録には目を通しましたが,いつも通りあえて頭の中を白紙にして点検に臨みました.その結果がこれです.

 この事例では,ラジエータそのものがほとんど詰まっていて,再使用不能な状態でした.もしお客様に代替品を送っていただかなければ,中古部品を時間をかけて探していたかもしれません.プロと言えどもすべての車種の部品をストックすることは不可能ですので,お客様にお力添えいただければ非常に心強いです.特に車両が古くなれば古くなるほど,ユーザーレベルで部品の予備を確保しておくことは,今後より一層重要になると考えられます.


※1 ギャラリー NS400RF (NC19)
※2 キャブレータに大量に吸い込まれた交換済みとされるエアフィルタについて





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